最近のペットブームもあり、猫を飼われている方も多いと聞きますが、“下部尿路結石症”という病気をご存知でしょうか。
先日、我が家の愛猫も同病に罹患してしまったのですが、今回はその原因や治療法など詳しく解説しますので、是非最後までお読みいただければと思います。
概要
泌尿器系(腎臓・尿管・膀胱・尿道)のいずれかに結晶や結石ができる病気を“尿路結石症”と言いますが、一般的には、腎臓もしくは尿管に発生する①上部尿路結石症と膀胱または尿道に発生する②下部尿路結石症の2つに分類されます。
ここで言う結晶とは尿中のミネラル成分が固体化したものであり、その結晶が凝集して肉眼でも見える程度まで大きくなったものが結石であるとお考え下さい。
下部尿路結石症は人間同様猫にも起こり得る病気であり、結晶や結石により尿道が塞がれることで尿が出にくい、何度もトイレに行く、血尿が出るなどの症状が現れる他、尿毒症の発生による死亡と言う最悪の結果を招く場合も…。
ガンや猫エイズ等と比較してそれほど深刻な病気ではないような印象をお持ちの方も少なくないと思いますが、この尿路結石症も決して甘く考えることが許されない病気なのです。
結石の種類
結石はそれを構成する成分によりいくつかの種類に分類されるのが一般的であり、猫の尿路結石症については①ストルバイト結石と②シュウ酸カルシウム結石の2つが存在します。
いずれも尿中に存在するミネラルを素に生成される一方、成分や結晶化を起こす場合の尿のpH値がそれぞれ異なるなど少々複雑なため、特徴をしっかり理解しておきましょう。
- ストルバイト結石
- シュウ酸カルシウム結石
ストルバイト結石
“リン酸マグネシウムアンモニウム”を成分とする結石を“ストルバイト結石”と言いますが、その正体は猫の尿中のマグネシウム、リン、アンモニウムが結晶化したもの。
尿がアルカリ性になることで尿中に溶解しているマグネシウムやリン、アンモニウムが結晶化を起こし、やがて結石になってしまうのです。
具体的には尿のpH(ペーハー)値が7.0になると結晶ができると言われていますが、食事療法によりpHを酸性にすることで結晶を溶かすことが可能。
また、1~6歳までの比較的若い猫に発生しやすいと言う特徴があります。
シュウ酸カルシウム結石
こちらはカルシウムに由来する結石であり、ストルバイト結石とは逆に尿が酸性になることで結晶化が起こりやすくなると言われています(pH値が6.0を下回ると結晶化しやすい)。
ストルバイト結石とは異なり、一度結石ができてしまうとpHをコントロールしても溶解せず、これを除去するには手術による外科的治療を要する点が最大の特徴と言ってよいでしょう。
同じくストルバイト結石とは対照的に、7歳以上の高齢期、老齢期の猫に発生しやすいことも覚えておきたい事項です。
原因
下部尿路結石症の原因は①食事、②体質、③生活環境にあると言われており、これらに影響された結果尿中に結石の素となる成分が溢れ出し、さらに尿のpH値が酸性もしくはアルカリ性のいずれかに傾くことで結晶が生成されます。
食事については、どのようなフードを食べていても結石ができない体質の猫が存在する一方、結石ができやすい体質の猫が尿路結石症を考慮していない一般のフードを食べ続けた場合にはその影響を強く受けてしまうので注意しなければなりません。
③の生活環境は具体的には水分の摂取状況を指しますが、猫は元来砂漠で暮らす生き物だけにあまり水を飲まずに水分不足に陥る傾向があり、これが結晶・結石の生成を促進してしまうのです。
また、雄猫は雌猫に比べ尿道が狭いためより結石が詰まりやすく、下部尿路結石症を罹患する確率が高まることも覚えておいて下さい。
症状
下部尿路結石症は結晶又は結石により尿道が塞がれてしまう病気ですから、当然ながらおしっこの出が悪くなり、これが尿道の炎症や膀胱炎を引き起こします。
円滑な排尿が不可能なことにより、何度もトイレに行く、尿の色が濃くなる、排尿時に鳴く、血尿が出るなどの症状が見られる他、尿道が完全に詰まってしまい全く排尿ができなくなった場合には膀胱破裂や尿毒症の発生により命を落とすケースも…。
特に完全に尿道が閉塞してしまった場合は1~2日間で死に至ると言われていますから、迅速な対応が求められます。
- 尿が出にくい
- 何度もトイレに行く
- 一度の排尿量が少ない
- 排尿時に鳴く
- 血尿
- 尿がキラキラ光って見える
初めから重篤な状態に陥るのではなく順を追って症状が悪化して行くのが一般的ですが、我が家の猫の場合は、トイレに入るもののなかなか排尿ができない様子が見られ、何か様子がおかしいと思っていたところ血尿を確認しました。
血尿が出ていた段階では1度に排尿できる尿の量が著しく少なくなっており、少しでも発見が遅れれば最悪の事態になる可能性も否定できなかったことを考えても、普段から愛猫の様子を注意深く観察し、様子がおかしい場合には迅速に医師の診断を受けることが大切であると言えますね。
診断
下部尿路結石症の診断は尿検査の結果を根拠として下されます。
尿のpH値、潜血の有無、比重なども重要な診断材料になりますが、検鏡(顕微鏡での検査)による尿中の結晶の確認を持って確定診断がなされるのが一般的であり、我が家の猫が下部尿路結石症を発症した時も結晶の存在を指摘され、実際に画像を見せてもらいました。
なお、先述した通りストルバイト結晶ができている場合の尿のpH値はアルカリ性を、シュウ酸カルシウム結晶ができている場合は酸性を示します。
治療
食事療法
ストルバイト結晶ができている場合は食事療法により結晶又は結石の溶解を図るのが一般的な治療ですが、尿路結石症用の処方食は、尿pH値の調整や尿中へのミネラル成分の流出の抑制、塩分を多めに使用することで猫の水分摂取を助長するなど結晶や結石の溶解に効果的に作用するようにつくられています。
我が家の猫に血尿が見られ最初に医師の診断を受けた時点での尿pH値は9.0と大きくアルカリ性に傾いており、例によって非常に多くのストルバイト結晶が確認されましたが、その日から処方食を与えたところ、1週間後にはpH値が6.5まで低下、結晶も消えていました。
同時に投薬や注射による治療を受けたこともあり全てが処方食の効果と断言することはできないものの、然るべきフードを与えることによって確かな効果を得られることに間違いはないでしょう。
手術
ストルバイト結石とは異なり、シュウ酸カルシウム結石は1度できてしまうと溶解させることが不可能なため、外科的手法つまりは手術による除去を行うより他ありません。
また、ストルバイト結石の場合も尿道が完全に閉塞し、すぐに結石または結晶を取り除かないと尿毒症や膀胱破裂を招き命に関わる恐れがあると判断された場合にも手術が選択されます。
注射・投薬
ストルバイト結石に対する食事療法を実践するにあたり、同時に膀胱炎や尿道の炎症が疑われる場合には注射や投薬が行われることもあります。
主な成分・効能は抗生物質と利尿作用ですが、炎症を鎮めることで排尿時の痛みを取り除き、排尿を楽にする狙いもあるとのこと。
処方食同様にその効果は大きく、血尿が発見された時にはごく少量しか排尿できなかった我が家の猫が注射をして約1時間後に通常の量の尿を排出できたこともそれを証明していると思います。
予防
下部尿路結石症を予防するには、①良質な食事と②十分な量の水分摂取の2点が非常に重要なポイントになります。
食事については療法フードを与えて猫の尿のpH値を適切な値にコントロールすることが基本ですが、ロイヤルカナンや日本ヒルズコルゲートが販売する療法食はストルバイト結晶とシュウ酸カルシウム結晶の両方ができ難いpH値になる様に多くの工夫がなされていますので、心配は要りません。
両社の製品ともに、尿路結石症に罹っている猫のみならず予防用フードとして一般の猫に投与しても問題ありませんので、普段からこれらを食べさせることは非常に有効な方法と言えるでしょう。
また、結石は尿が濃くなることでできやすくなるため十分な水分を摂取させることが大事ですから、常に新鮮な水を用意してあげる、定期的にウェットフードを与えるなどの工夫も必要になります。
もちろん、体質次第で一般のフードを食べていても尿路結石症とは無縁の猫も多くいますが、日頃より十分な水分を摂取するに越したことはないですからね。
終わりに
今回は、我が家の愛猫が罹患した経験を参考にしながら猫の下部尿路結石症について投稿して来ました。
他の病気同様にとにかく早期発見が何よりも大切ですから、毎日愛猫の様子を観察し、普段と違うところがないかどうかしっかりチェックするようにしましょう。
コメント