“リカバリディスク”、“回復ドライブ”、“システム修復ディスク”、皆さんはこれら3つの役割を正しく理解されているでしょうか。
どれもパソコンをリカバリするためのツールに思えますが、その共通点と違いを解説します。
リカバリとは
リカバリとはパソコンを工場出荷時の状態に戻す作業のことを言い、これを実行することでインストールしたソフトウェアや作成データなど購入後に加えられた変更が全てリセットされます。
“コンピューターのシステムを新品購入後初めて電源を入れた時の状態に戻す機能”と表現する方がより解りやすいでしょうか。
もちろん、特別の事情がない限りリカバリを行う必要は全くないのですが、マシンに不具合が生じる、コンピューターを売却する等の理由でシステムを購入時の状態に戻す必要性が生じる可能性もあるだけに、パソコンにとって必要不可欠な機能でもあるのです。
Point
リカバリ=パソコンを工場出荷時の状態に復元すること
リカバリメディア
リカバリメディアとは、パソコンを工場出荷時の状態に戻すためのシステム(=リカバリ機能)を持つメディア(CDやDVD、USBフラッシュメモリ)のことを言います。
①リカバリディスクと②回復ドライブはリカバリメディアの1種であり、パソコンに内蔵のHDDやSSD内のリカバリ領域と全く同じものがこれらのメディアに入っていると考えればイメージしやすいでしょう。
リカバリメディアを使用することでパソコンの内臓ストレージ(HDDやSSD)にアクセスすることなく、外部からリカバリを行うことができます。
最近のパソコンは内蔵ストレージ内にリカバリ領域を持ち、リカバリメディアを使用することなくリカバリを行うことができるのですが、パソコンに不具合が発生してリカバリ領域にアクセスできない、ストレージ内のリカバリ領域を誤って削除してしまった等の理由でリカバリを実行できない可能性もゼロではありません。
そこでパソコンの状態に関わらず外部から半ば強制的にリカバリを実行できるリカバリメディアを確保しておく必要があり、まさに“最後の砦”の役割を果たすのがリカバリメディアなのです。
Memo
- リカバリメディア=リカバリ機能を持つメディア
- リカバリメディアにはリカバリディスクと回復ドライブの2種類がある
リカバリディスク
CDやDVD等のディスクタイプのリカバリメディアを”リカバリディスク“と呼びます。
リカバリディスクはリカバリメディアの1つであり、一昔前はほとんどのPCに付属していたことから最も馴染みがあるリカバリメディアがリカバリディスクであると言えるのではないでしょうか。
最近はパソコン購入後にユーザー自らこのリカバリメディアを作成するのが一般化していますが、OSの標準機能でリカバリディスクを作成するのはWindows7までで、Windows8以降はUSBメモリを使用する“回復ドライブ方式”へと移行しました。
ただし、専用のアプリや各メーカーが配布するソフトを使用すればWindows8以降でもCDやDVDを使いリカバリディスクを作成できる場合がありますし、ディスクタイプのリカバリメディアを有料で販売しているメーカーもあります。
回復ドライブ
USBフラッシュメモリや外付けHDDを用いて作成するリカバリメディアを“回復ドライブ”と呼びますが、その役割はリカバリディスクと同じ。
よって、パソコンのシステムからリカバリを実行することが不可能な状況でも、回復ドライブがあれば外部からリカバリシステムを起動してPCを初期状態に戻すことができます。
Windows8以降はリカバリディスクではなく回復ドライブをリカバリメディアとして作成する仕様になりましたので、PC購入後に速やかにこれを作成してください。
リカバリディスクと同様に、OSの標準機能を使わず専用のアプリやメーカーが配布するソフトから回復ドライブを作成できる場合もあります。
なお、回復ドライブの性質上ドライブ作成時にOSに適用されているアップデート等が反映されますので、リカバリによりシステムを完全な工場出荷時の状態に復元したいのであれば、新品購入してから初めてパソコンの電源を入れた直後に回復ドライブを作成しなければなりません。
システム修復ディスク
続いてシステム修復ディスクですが、こちらはWindows7からOSの標準機能で作成できるようになりました。
パソコンが起動できなくなった場合、このシステム修復ディスクを使ってシステム回復オプションを起動させ起動のトラブルを修復したり、外付けHDDに別途作成したバックアップ(任意の時点でのシステムイメージ)をもとにPCを復元させることができます。
リカバリを行うこともできますが、回復ドライブやリカバリディスクとは異なり工場出荷時のシステムイメージを持ちません。
よって、システム修復ディスクから回復オプションを起動しリカバリを行う場合はPCのストレージ内のリカバリ領域のシステムイメージが必要であり、誤ってこれを削除してしまった場合や内臓ストレージそのものに不具合がある場合にはリカバリの実行が不可能。
それに対し回復ドライブやリカバリディスクは自らがリカバリイメージを持ち、パソコンに内蔵されるストレージの状態に左右されることなく確実にリカバリを開始できますし、回復オプションを起動させることも可能なので、リカバリメディアがあればシステム修復ディスクは不要なのです。
まとめ
下の表にリカバリメディア(回復ドライブ、リカバリディスク)とシステム修復ディスクの役割をまとめてみました。
先述の通りリカバリイメージを持つかどうかが両者の最大の違いですが、システム修復ディスクにできることは全てリカバリメディアでも実行可能なので、リカバリメディアの方が圧倒的に重要度が高いと言えます。
PCのストレージに問題がある状況ではシステム修復ディスクによるリカバリができない可能性がありますので、パソコン購入後は何よりも優先してリカバリメディアを作成するようにしましょう。
リカバリメディアとシステム修復ディスクの役割リカバリメディア | システム修復ディスク | |
リカバリ | ◯ | △ ※パソコン内蔵ストレージのリカバリ領域が必要 |
スタートアップ修復 | ◯ | ◯ |
システムの復元 | ◯ ※復元ポイントが必要 | ◯ ※復元ポイントが必要 |
システムイメージの回復 | ◯ ※別途システムイメージが必要 | ◯ ※別途システムイメージが必要 |
メモリ診断 | ◯ | ◯ |
コマンドプロンプト | ◯ | ◯ |
終わりに
今回は、回復ドライブ、リカバリディスク、システム修復ディスクの役割を解説しました。
少々複雑な話ではありますが、リカバリメディア(回復ドライブもしくはリカバリディスク)さえあればとにかく安心なので、パソコン購入後に確実に作成していただきたいと思います。
コメント