選挙運動期間が始まると、候補者がのぼり旗が取り付けられた自転車に乗って選挙運動を行う光景を目にすることがありますが、これが公職選挙法違反であることをご存知でしょうか。
以下で詳しく解説します。
自転車へののぼりの搭載は違法
選挙運動のために掲示することができる文書図画は、以下に列挙するものに限定されます(公職選挙法第143条)。
のぼり旗は文書図画のうちの看板の類に該当しますが、選挙運動のために使用できる看板の類は、①選挙事務所で使用するもの、②選挙カー及び選挙運動用の船舶に取り付けて使用するもの、③演説会場で使用するものの3つですから、自転車にのぼり旗をつけることは許されません。
選挙運動において、自転車にのぼり旗をつける行為は違法なのです。
実際には当たり前のように自転車にのぼりを取り付けて選挙運動を行う残念な候補者が少なくないのですが、警察がしっかり取り締まりを行うか否かは別問題としても、それが公職選挙法に反する行為であることを覚えておきましょう。
なお、念の為選挙管理委員会に自転車にのぼり旗を取り付けて選挙運動を行うことの是非を尋ねてみましたが、やはり正しい方法ではないとの回答が得られました。
選挙運動で使用できる文書図画
- 選挙事務所で使用するポスター、立札、ちょうちん、看板の類
- 選挙カー及び選挙運動用の船舶に取り付けて使用するポスター、立札、ちょうちん、看板の類
- 公職の候補者が使用するたすき、胸章、腕章
- 演説会場で使用するポスター、立札、ちょうちん、看板の類
- 屋内の演説会場で使用する映写等の類
- 個人演説会告知用のポスター(衆議院議員選挙小選挙区、参議院議員選挙選挙区、都道府県知事選挙のみ)
- その他選挙運動用のポスター
連呼行為も違反
候補者の名前などを繰り返し連呼する“連呼行為”は、演説会場及び街頭演説にて行う場合、選挙カーにて行う場合を除いて禁止されています。
従って、候補者が自転車に乗りながら連呼行為を行うことは許されません。
もちろん、ある場所に自転車を停めて、その場所で街頭演説を行う中で連呼行為を行うのであれば全くの合法です。
政治活動では可能
選挙運動において自転車にのぼり旗を取り付ける行為は公職選挙法違反ですが、政治活動においては、それを直接禁止する法令がありません。
ただし、公職の候補者等が①その氏名、②氏名が類推される事項及び③その後援団体の名称が記載される文書図画を掲示して政治活動を行うことは禁じられています(公職選挙法第143条第16項)。
よって、自転車にのぼり旗をつけて政治活動を行う場合は上記の①〜③に該当しないのぼり旗を使用する必要がありますが、実際には“本人”などと書かれたのぼりが使用されるケースがあるようです。
しかしながら、日頃より自転車を利用しての政治活動が行われる機会は少なく、やはり選挙の公示直前に行われることが多いですから、仮に本人と書かれたのぼりを使用したとしても、“事前運動”と判断される可能性がゼロとは言えないでしょう。
まとめ
自転車にのぼり旗を取り付けて選挙運動を行う行為は公職選挙法違反です。
また、候補者が自転車に乗りながら連呼行為を行うこともできませんので、選挙運動において、自転車は単なる移動手段の1つに過ぎないと思った方がよいのかもしれません。
選挙運動では候補者の名前入りのたすきを使用することができますので、自転車に乗りながらそのたすきに書かれた候補者名を聴衆に見せつけることには一定の効果があるのかもしれませんが…。
Point
自転車にのぼり旗を取り付けて選挙運動を行うのは違法
終わりに
今回は、自転車にのぼり旗を取り付けて選挙運動を行うことの違法性について投稿しました。
加えて、のぼり旗は街頭演説でも使用できないなど選挙運動においてその取り扱いが厳しく制限されますので、十分に注意しましょう。
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