選挙ポスターは選挙運動に使用することができるアイテムの1つですが、選挙の種類やその使用者ごとに掲示場所が細かく指定されていることをご存知でしょうか。
今回は、その詳細を解説します。
はじめに
選挙運動のために使用することができるポスターは、①選挙事務所を表示するために選挙事務所に掲示するもの、②選挙カー及び選挙運動用の船舶に取り付けて使用するもの、③演説会の会場で使用するもの、④個人演説会の告知に使用するもの、⑤その他選挙運動のために使用するものの計5種類あります。
ポスター掲示場等に掲示され、私たち有権者に最も身近なポスターは⑤のタイプですが、本投稿ではこの⑤の選挙ポスターの掲示場所について解説することを確認しておきます。
なお、各種選挙ポスターのサイズ及び枚数の制限についてはリンク先のページで詳しく解説していますので、そちらを参照下さい。
衆議院・参議院議員選挙
国政選挙(衆議院議員選挙・参議院議員選挙)では、選挙方法の違い又はその使用者によって選挙ポスターの掲示場所が異なりますが、以下で詳細を解説します。
国政選挙における選挙ポスターの掲示場所選挙の種類 | ポスターの使用者 | ポスターの掲示場所 | |
選挙区 |
衆議院小選挙区 | 候補者個人 | 市町村選挙管理委員会が設置する掲示場 |
候補者届出政党 | 原則として自由(掲示禁止場所あり) | ||
参議院選挙区 | 候補者個人 | 市町村選挙管理委員会が設置する掲示場 | |
比例代表 | 候補者個人 | 原則として自由(掲示禁止場所あり) | |
衆議院名簿届出政党 |
小選挙区及び選挙区
衆議院議員選挙の小選挙区、参議院議員選挙の選挙区において候補者個人が使用する選挙ポスターについては、市町村の選挙管理委員会が設置するポスター掲示場(=掲示板)にのみこれを掲示することができます(公職選挙法第143条第3項、144条の2第1項)。
掲示することができるポスターの数は、市町村選挙管理委員会が設置するポスター掲示場1箇所ごとに、立候補者1人につき1枚です。
また、衆議院議員選挙では、候補者届出政党が都道府県ごとに立候補者数×1,000枚の選挙ポスターを各選挙区ごとに1,000枚づつ掲示することができます(公職選挙法第144条第1項第1号)。
候補者届出政党が使用する選挙ポスターの掲示場所は原則として自由〔公共の場所(橋梁や電柱、公営住宅、その他総務省令で定める場所を除く)や不在者投票所への掲示は禁止〕ですが、他人の工作物へポスターを掲示する場合はその所有者または管理者の承諾を得なければなりません。
Point
- 小選挙区及び選挙区で候補者個人が使用する選挙ポスターは公営の掲示板にのみ掲示可能
- 小選挙区及び選挙区の候補者は掲示板1つにつき1枚の選挙ポスターを掲示することができる
- 候補者届出政党が使用する選挙ポスターの掲示場所は原則として自由である
比例代表
衆議院議員選挙および参議院議員選挙の比例代表選挙においてはポスター掲示場を設置しないこととされています。
よって、原則として任意の場所に選挙ポスターを掲示することができますが、国や地方公共団体が所有または管理する場所(橋梁、電柱、公営住宅、その他総務省令で定める場所を除く)、不在者投票管理者が管理する投票所への掲示は許されません(公職選挙法第145条第1項)。
また、住宅の塀や電柱など他人の工作物に選挙ポスターを掲示する場合はその所有者又は管理者の承諾を得る必要がある他、中央選挙管理会が行う検印を受ける若しくは中央選挙管理会が交付する証紙を貼付することが義務付けられています(公職選挙法第145条第2項、第144条第2項)。
Point
- 比例代表選挙では原則として任意の場所に選挙ポスターを掲示することができる
- 他人の工作物へ選挙ポスターを掲示するには所有者または管理者の承諾が必要
- 公共の場所(橋梁や電柱等を除く)、不在者投票の投票所へのポスターの掲示はできない
知事選挙
都道府県知事選挙では、衆議院議員選挙の小選挙区、参議院議員選挙の選挙区と同様に市町村選挙管理委員会が設置する掲示場(掲示板)にのみ、選挙ポスターを掲示することができます。
これ以外の場所へ選挙ポスターを掲示することはできません。
県議会・市町村長・市議会選挙
県議会議員選挙、市町村長選挙、市町村議会議員選挙では、都道府県及び市町村が条例でポスター掲示場の設置を定めている場合はポスター掲示場にのみ選挙ポスターを掲示することができます。
条例でポスター掲示場の設置が定められていない場合は任意の場所に選挙ポスターを掲示することができます〔公共の場所(橋梁や電柱、公営住宅等を除く)や不在者投票所への掲示は不可〕が、個人の工作物にポスターを掲示する場合はその所有者又は管理者の承諾を得なければなりません。
ポスター掲示場が設置される場合、掲示場ごとに、候補者1人につき1枚の選挙ポスターの掲示が認められています。
まとめ
下の表に、選挙ごとの選挙ポスターの掲示場所をまとめました。
選挙の種類やポスターの使用者によって掲示可能な場所が異なるなど複雑なルールが設定されているため、正しい知識が求められます。
各選挙における選挙ポスターの掲示場所選挙の種類 | ポスターの使用者 | ポスターの掲示場所 | ||
選挙区 |
衆議院小選挙区 | 候補者個人 | 市町村選挙管理委員会が設置する掲示場 | |
候補者届出政党 | 原則として自由(掲示禁止場所あり) | |||
参議院選挙区 | 候補者個人 | 市町村選挙管理委員会が設置する掲示場 | ||
比例代表 | 候補者個人 | 原則として自由(掲示禁止場所あり) | ||
衆議院名簿届出政党 | ||||
都道府県知事選挙 | 候補者個人 | 市町村選挙管理委員会が設置する掲示場 | ||
都道府県議会議員選挙 | 掲示場が設置される場合 | 候補者個人 |
市町村選挙管理委員会が設置する掲示場 | |
掲示場が設置されない場合 | 候補者個人 | 原則として自由(掲示禁止場所あり) | ||
市町村長選挙 | 掲示場が設置される場合 | 候補者個人 | 市町村選挙管理委員会が設置する掲示場 | |
掲示場が設置されない場合 | 候補者個人 | 原則として自由(掲示禁止場所あり) | ||
市町村議会議員選挙 | 掲示場が設置される場合 | 候補者個人 | 市町村選挙管理委員会が設置する掲示場 | |
掲示場が設置されない場合 | 候補者個人 | 原則として自由(掲示禁止場所あり) |
終わりに
今回は、選挙運動用のポスターの掲示場所について投稿しました。
何かと細かいルールがあり、これらを理解することは決して簡単ではありませんが、公職選挙法に抵触することがないように注意しましょう。
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