賃貸住宅を借りる場合の契約条件に保証金や敷金の“償却”、“敷引き”が盛り込まれることがありますが、これらが意味する内容をご存知でしょうか。
今回は、この保証金(敷金)の償却と敷引きについて解説します。
はじめに
はじめに敷金と保証金の概要を確認しておきますが、いずれも住宅の賃貸借における初期費用の1つであり、入居時に借主が貸主に納入するお金のことを言います。
敷金と保証金は家賃の滞納や入居者の過失による賃貸住宅の修繕が発生した場合の担保を目的とするものであり、特別の理由がない限り貸主は退去時に借主にこれらを返還しなければなりません。
万が一の場合の担保という意味で敷金と保証金の基本的な性質は同じですが、関西地方では保証金が、その他の地域では敷金の名称が用いられるのが一般的と言われており、それぞれの相場も異なります。
償却の意味
“償却”の意味は、借金などをすっかり返すこと、償還であり、“借用金を償却する”とは借り入れたお金の一部、又は全額を返すことを言います。
ただし、住宅の賃貸借における敷金及び保証金の償却と言う場合は意味合いが異なり、返還されないお金を意味します。
よって、“償却金=返金されないお金”と理解しておけばよいでしょう。
償却金と敷引き金
敷金と保証金は原則として退去時に借主に返金されますが、入居中の家賃の滞納や借主の過失による賃貸住宅の修繕が発生する場合は、それらに相当する額が差し引かれて借主に返却されます。
この原則とは別に、無条件で敷金や保証金から一定の額が引かれることを償却又は敷引きと言い、差し引かれた償却金や敷引き金は返金されません。
従って入居時の契約で保証金及び敷金の償却又は敷引きが約束されている場合は、契約時に納めた保証金から償却金(敷引き金)が引かれ、さらに入居者負担の修繕費用が差し引かれた額が借主に返却されることになります。
Check
返金される金額=保証金(敷金)−〔償却金(敷引き金)+修繕費用等〕
なお、保証金及び敷金の“償却”と“敷引き”は同じ意味と考えてよいですが、関西地方では敷引きと呼ばれ、関東地方では償却と呼ばれるとも言われています。
また、敷金の相場は保証金の相場よりも低く、敷金の償却や敷引きが行われることは稀と言えると思います(実際には、敷引き、償却が行われるのは保証金の場合のみと考えてもよい)。
償却のパターン
保証金、敷金の償却にはいくつかのパターンがあります。
償却のパターン
- 年ごとに一定率を償却
- 家賃◯◯ヶ月分を償却
- 実費償却
年ごとに一定率を償却
入居から1年が経過するごとに一定の割合で預けておいた金額が減少するのがこのパターンです。
例えば、保証金(敷金)が30万円で年に5パーセントが償却される条件では入居から2年が経過した時点で3万円が償却され、10年入居した時点で退去する場合には30万円の納入金から償却金15万円が差し引かれ、状況次第ではさらに修繕費用等が引かれた残額が借主に返金されます。
償却率や入居期間によっては退去時に返金される金額がゼロになる可能性もありますから、注意しなければなりません。
家賃〇〇ヶ月分を償却
こちらは予め預けてある保証金(敷金)から一定月分の家賃に相当する額が差し引かれるパターンですが、“敷引き◯ヶ月”と表記されることが多く、最もポピュラーな償却方式と言えるかもしれません。
家賃が5万円で保証金(敷金)の額が30万円、敷引き2ヶ月の場合、まずは30万円から償却金10万円が引かれ、そこから修繕費用等が差し引かれる可能性があり、退去時にはその残額が借主に返金されます。
実費償却
こちらは最も分かりやすいパターンで、保証金(敷金)から修繕費用など必要な経費が差し引かれ、残額が返金される方式です。
ただし、滞納している家賃や入居者の過失による修繕費用は元来敷金から差し引かれるものであり、わざわざ償却金や敷引き金として計上する必要はないかもしれません。
もちろん、ハウスクリーニング費用や鍵の交換費用など本来貸主が負担すべき費用を入居者が負担する条件で契約を結ぶのであれば、意義のあることだと思います。
まとめ
保証金(敷金)の償却と敷引きについて、以下のようにまとめることができます。
まとめ
- 保証金(敷金)から無条件に一定額を差し引くことを償却または敷引きと言う
- 償却と敷引きは同じである
- 償却金・敷引き金は返金されない
終わりに
今回は、住宅の賃貸借における保証金(敷金)の償却と敷引きについて投稿しました。
専門的な用語が多く理解することが難しいですが、後々後悔することがないように契約条件をしっかり把握し、納得した上で契約を結びましょう。
コメント