“自首”と“出頭”、皆さんはこの2つの言葉の違いをご存知でしょうか。
いずれもあまり聞こえの良い言葉ではありませんが、今回は両者の意味の違いと減刑との関係について解説しますので、ぜひ最後までお読みいただきたいと思います。
自首
犯罪の事実又は犯人が誰なのかがわからない段階で自らが犯人であることを捜査機関に申し出ることを自首と言います。
法律上、犯罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自発的に自身の犯行を申告することがその成立条件なのですが、具体的には以下に挙げる3つの要件を満たしていなければなりません。
- 自発的に自己の犯罪事実を申告すること
- 自己の訴追を含む処分を求めること
- 犯罪事実及び犯人が捜査機関に発覚する前に申告が行われること
自発的な申告
自首が成立する要件の1つとして、犯罪者が自発的に自身の犯行事実を申告することが挙げられます。
よって、職務質問や取り調べに対して犯罪を自供する行為は自首には該当しません。
また、犯罪の事実が家族等の知るところとなり、彼らに連れられて捜査機関に出頭した場合は連れ添った人物による告発と判断され、やはり自首とは認められないケースが多いようです。
自身の処分の要求
犯罪者が自らの犯罪事実及びその責任を認めた上で自身への処分を望んでいるいることも自首の成立要件です。
一部を隠蔽する申告が行われた場合、犯行事実を認めつつもその責任を否認している場合などは自首が成立しません。
発覚前の申告
最後になりますが、犯罪の事実及び犯人が誰なのかが捜査機関に発覚する前に申告が行われることも自首の成立要件です。
この“捜査機関に発覚する前”とは、①犯罪の存在自体を捜査機関が認知していない段階、又は②犯罪事実は発覚しているものの犯人が特定されていない状態を言いますが、例えば指名手配が行われている状況で自らの犯行を申告したとしても自首にはなりません。
犯行からの時間の経過に比例して捜査機関による事実の把握が進むことを考えれば、なるべく早いうちに自らの犯行を申し出ることが自首の成立につながると言えるでしょう。
出頭
自首の成立要件を理解されている方はにとっては説明不要と思いますが、犯人が特定されている状況で犯人自らが捜査機関へ赴くことを出頭と言います。
行方を眩ませていた被疑者が自ら交番や警察署に出向く行為などはその典型例と言ってよいでしょう。
なお、この出頭は法律用語ではなく、単に当事者がある場所に出向くことを意味する場合もありますが、日頃より“裁判所への出頭”等の表現を耳にする機会がありますね。
刑罰の軽減
犯人が自首した場合には当該人物が受ける刑罰が軽減されることがありますが、その根拠となる“刑法第42条第1項”を以下に載せたので、ご確認いただきたいと思います。
(自首等)
罪を犯したものが捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を軽減することができる。
刑法第42条第1項より
自首すれば必ず減刑されるわけではないものの、刑法第68条に規定されるように、本来受けるべき量刑の1/2まで刑が減じられることには驚かされますね。
なお、言うまでもないことではありますが、出頭は減刑の対象にはなりません。
法定の量刑 | 減刑された場合の量刑 |
死刑 | 無期懲役又は禁錮/10年以上の懲役又は禁錮 |
無期懲役又は禁錮 | 7年以上の有期懲役又は禁錮 |
有期懲役又は禁錮 | 長期及び短期の1/2 |
罰金 | 多額及び寡額の1/2 |
拘留 | 長期の1/2 |
科料 | 多額の1/2 |
※ 刑法第68条より
終わりに
自首と出頭の違いをご理解いただけましたでしょうか。
犯行から間もない段階ほど自首が成立しやすいわけですが、これらの事柄とは無縁で生活できることが何よりですから、くれぐれも犯罪行為に手を染めることがないよう努めましょう。
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