先日は選挙ポスターに設けられる様々な規制について投稿しましたが、厳しい制限を受ける点においては選挙ビラ(選挙チラシ)もその例外ではありません。
今回は、サイズや枚数など選挙ビラの正しい取り扱い方法を解説します。
選挙チラシを使用できる選挙
選挙運動のために選挙ビラを使用することができるのは、①衆議院議員選挙、②参議院議員選挙、③都道府県知事選挙、④都道府県議会議員選挙、⑤市町村長選挙、⑥市議会議員選挙です(公職選挙法第142条第1項)。
2019年5月29日現在、町議会議員選挙と村議会議員選挙では選挙ビラの使用が認められていません。
なお、衆議院議員選挙では、候補者個人の他に、候補者届出政党並びに衆議院名簿届出政党等が選挙ビラを使用することができます(公職選挙法第142条第2項、第3項)。
各種選挙と選挙ビラの使用の可否選挙の種類 | 選挙ビラの使用 |
衆議院議員選挙 | ○ |
参議院議員選挙 | ○ |
都道府県知事選挙 | ○ |
都道府県議会議員選挙 | ○ |
市町村長選挙 | ○ |
市議会議員選挙 | ○ |
町村議会議員選挙 | × |
サイズ
選挙ビラのサイズは、候補者個人が使用するものは長さ29.7センチ、幅21センチを超えてはならず、衆議院議員選挙(小選挙区)において候補者届出政党が使用するものは長さ42センチ、幅29.7センチを超えてはならないとされています(公職選挙法第142条第8項)。
衆議院議員選挙(比例代表)において衆議院名簿届出政党等が使用する選挙ビラには、サイズ制限がありません。
選挙ビラのサイズの上限選挙ビラの種類 | サイズの上限 | |
長さ | 幅 | |
候補者個人が使用するもの | 29.7cm | 21cm |
候補者届出政党が使用するもの | 42cm | 29.7cm |
衆議院名簿届出政党等が使用するもの | 制限なし |
枚数
使用者 | 選挙の種類 | 使用可能な枚数 |
候補者個人 |
衆議院議員選挙(小選挙区) | 70,000 |
参議院議員選挙(選挙区) | 100,000~ | |
参議院議員選挙(比例代表) | 250,000 | |
都道府県知事選挙 | 100,000~ | |
都道府県議会議員選挙 | 16,000 | |
市長選挙(指定都市) | 70,000 | |
市議会議員選挙(指定都市) | 8,000 | |
市長選挙 | 16,000 | |
市議会議員選挙 | 4,000 | |
町村長選挙 | 5,000 | |
町村議会議員選挙 | − | |
政党等 | 衆議院議員選挙(小選挙区) | 40,000×候補者数 |
衆議院議員選挙(比例代表) | 制限なし |
衆議院議員選挙
衆議院議員選挙(小選挙区)では、各候補者が当該選挙を管理する選挙管理委員会に届け出た2種類以内の選挙ビラ70,000枚を頒布することができる他、候補者届出政党が都道府県ごとに40,000枚×候補者数の選挙ビラを頒布することができます。
同じく衆議院議員選挙(比例代表)では、衆議院名簿届出政党等がその届け出た衆議院名簿に係る選挙区ごとに中央選挙管理会に届け出た2種類以内の選挙ビラを頒布することができますが、その枚数に制限はありません。
参議院議員選挙
参議院議員選挙(選挙区)では、候補者1人について、当該選挙区の区域内の衆議院議員(小選挙区)の選挙区の数が1の場合は当該選挙を管理する選挙管理委員会に届け出た2種類以内の選挙ビラ10万枚を、選挙区の数が1を超える場合は1を増すごとに15,000枚を10万枚に加えた数を頒布することができます(上限は30万枚)。
参議院議員選挙(比例代表)では、公職の候補者たる参議院名簿登載者1人につき、中央選挙管理会に届け出た2種類以内の選挙ビラ25万枚を頒布することができます。
都道府県知事選挙
都道府県知事選挙において使用できる選挙ビラの枚数は、参議院議員選挙(選挙区)と同じです。
都道府県議会議員選挙
都道府県議会議員選挙では、候補者1人につき、当該選挙を管理する選挙管理委員会に届け出た2種類以内の選挙ビラ16,000枚を頒布することができます。
市の選挙
市の選挙においては、候補者1人につき、指定都市の長の選挙では当該選挙を管理する選挙管理委員会に届け出た2種類以内の選挙ビラ70,000枚を、指定都市の議会の選挙では8,000枚を、指定都市以外の長の選挙では16,000枚を、指定都市以外の議会の選挙では4,000枚を頒布することができます。
町村の選挙
町村の選挙においては、長の選挙では当該選挙を管理する選挙管理委員会に届け出た2種類以内の選挙ビラ5,000枚を頒布することができます。
議会の選挙では、選挙ビラを頒布することができません(2019.5.31現在)。
配布方法
選挙ビラは、①新聞折込、②選挙事務所内、③個人演説会の会場、④街頭演説の場所にて頒布することが可能です(公職選挙法第142条第6項)。
衆議院議員選挙では、小選挙区において候補者個人が使用する選挙ビラを政党等の選挙事務所、演説会場及び街頭演説の場所において頒布することができ、政党等が使用する選挙ビラを候補者個人の選挙事務所や演説会場、街頭演説の場所において頒布することもできます(公職選挙法施行令第109条の6第1号、第2号、第4号、第5号)。
また、参議院議員選挙(比例代表)では、名簿登載者個人の選挙事務所のほか、政党等の選挙事務所にて選挙ビラを頒布することができます。
選挙ビラの頒布方法
- 新聞折込
- 選挙事務所内(衆議院選挙小選挙区、参議院選挙比例代表では政党等の選挙事務所を含む)
- 個人演説会の会場(衆議院選挙では政党等が行う演説会の会場を含む)
- 街頭演説(衆議院議員選挙では政党等が行うものを含む)
時間
選挙ビラの頒布について、直接その時間を規制する法令はありません。
ただし、街頭演説を行うことができるのは午前8時から午後8時までの間に限られますので、街頭演説の場所で選挙ビラを頒布する場合は、その時間を厳守する必要があります。
街頭演説の場所で行うものを除き、街頭で選挙ビラを頒布することはできませんので、例えば8時~20時以外の時間に路上で選挙ビラを頒布すれば、公職選挙法違反に問われることになります。
証紙の貼付
選挙ビラには、原則として、当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会(参議院比例代表の選挙においては中央選挙管理会)が交付する証紙を貼付しなければなりません(公職選挙法第142条第7項)。
唯一の例外として、衆議院議員選挙(比例代表)において衆議院名簿届出政党等が使用する選挙ビラには証紙の貼付が不要です。
頒布責任者及び印刷者の氏名等の記載
選挙ビラには、その種類に関わりなく、表面に頒布責任者及び印刷者の氏名と住所を記載しなければなりません(公職選挙法第142条第9項)。
同時に、参議院議員選挙(比例代表)で参議院名簿登載者が使用する選挙ビラには当該参議院名簿登載者に係る参議院名簿届出政党等の名称及び中央選挙管理会に届け出たものである旨を表示する記号を、衆議院議員選挙(小選挙区)で候補者届出政党が使用する選挙ビラには当該候補者届出政党の名称を、衆議院議員選挙(比例代表)の選挙で衆議院名簿届出政党等が使用する選挙ビラには当該衆議院名簿届出政党等の名称及び中央選挙管理会に届け出たものであることを表示する記号を記載する必要があります。
終わりに
今回は、サイズや枚数制限など、選挙ビラに設けられる様々な規制について解説しました。
選挙ポスターやハガキなどの文書図画と同様に、選挙ビラの取り扱いは厳しく制限されますので、十分に注意しましょう。
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