選挙ポスターは選挙運動のために使用できる文書図画の定番とも言える存在ですが、一言で選挙ポスターと言っても実際には多くの種類があり、サイズや枚数制限など詳細な規制が設けられていることをご存知でしょうか。
今回は、その詳細を解説します。
選挙運動に使用できるポスター
選挙運動のために使用することができるポスターは、①選挙事務所を表示するため選挙事務所で使用するポスター、②選挙カー及び選挙運動用の船舶に取り付けて使用するポスター、③演説会場で使用するポスター、④個人演説会告知用のポスター、⑤その他選挙運動のためのポスターの5つです。
5種類もの選挙ポスターが存在することに驚かれる方も少なくないと思いますが、掲示板などに掲示されるのは⑤のポスターであり、我々有権者に最も身近な選挙ポスターがこのタイプのポスターであると言ってよいでしょう。
なお、④の個人演説会告知用のポスターは、衆議院議員選挙(小選挙区)、参議院議員選挙(選挙区)および都道府県知事選挙でのみ使用可能であり、その他選挙でこれを使用することはできません。
選挙運動で使用できるポスター
- 選挙事務所で使用するポスター
- 選挙カー及び選挙運動用の船舶に取り付けて使用するポスター
- 演説会場で使用するポスター
- 個人演説会告知用のポスター
- その他選挙運動のためのポスター
サイズ
選挙事務所を表示するために選挙事務所で使用する選挙ポスターのサイズの上限は、縦350センチ、横100センチです(公職選挙法第143条第9項)。
選挙カーおよび選挙運動用の船舶に取り付けて使用するポスター、演説会場で使用するポスターのサイズの上限は、縦273センチ、横73センチです(公職選挙法第143条第9項)。
個人演説会告知用のポスターのサイズは、長さ42センチ、幅10センチを超えてはなりません(公職選挙法第143条第11項)。
その他選挙運動のために使用するポスター(掲示板等に掲示するもの)については、衆議院議員選挙において候補者届出政党および衆議院名簿届出政党等が使用するもののサイズは縦85センチ、幅60センチ、それ以外のものは縦42センチ、幅30センチが上限です(公職選挙法第144条第4項)。
各種選挙ポスターのサイズの上限ポスターの種類 | サイズの上限(cm) | |
縦 | 横 | |
選挙事務所で使用するもの | 350 | 100 |
選挙カー等に取り付けるもの/演説会場で使用するもの | 273 | 73 |
個人演説会の告知に使用するもの | 42 | 10 |
その他1 | 42 | 30 |
その他2(衆議院議員選挙で政党等が使用するもの) | 85 | 60 |
その他1と個人演説会告知用を合わせて作成する場合 | 42 | 40 |
なお、個人演説会の告知用のポスターは、サイズの上限が縦42センチ、横30センチの選挙運動用のポスター(上表の“その他1”)と合わせて縦42センチ、横40センチ以内で作成、掲示することが可能です。
枚数の制限
選挙事務所で使用するポスターの数は、選挙事務所ごとに3を超えてはなりません(公職選挙法第143条第7項)。
演説会場にて使用するポスターについては、会場内で使用するものに数の制限はなく、会場外で使用するものの上限は2枚です(公職選挙法第143条第8項)。
ただし、衆議院議員選挙、参議院議員選挙(選挙区)、都道府県知事選挙においては、演説会の会場外へのポスターの掲示が禁止されています(公職選挙法第164条の2第4項)。
その他選挙運動のために使用する選挙ポスターについては、衆議院議員選挙(小選挙区)、参議院議員選挙(選挙区)、都道府県知事選挙およびその他選挙でポスター掲示場が設置される場合は、掲示場ごとに候補者1人につき1枚を掲示することが可能です(公職選挙法第143条第3項並びに第4項)。
同じく、衆議院議員選挙(小選挙区)で候補者届出政党が使用する選挙ポスター数の上限は候補者を届けた都道府県において1,000枚×届出候補者数、衆議院議員選挙(比例代表)で衆議院名簿届出政党等が使用する選挙ポスター数の上限は名簿を届け出た選挙区において500×名簿登録者数、参議院議員選挙(比例代表)で名簿登載者が使用する選挙ポスターは70,000枚が上限です(公職選挙法第144条第1項)。
なお、選挙カー及び選挙運動用の船舶に取り付けて使用する選挙ポスターに数の制限はありません。
証紙の貼付
選挙事務所で使用するポスター、選挙カー及び選挙運動用の船舶に取り付けて使用するポスター、演説会場にて使用するポスター、個人演説会告知用のポスター以外の選挙ポスターについては、公営の掲示板に掲示するものを除き、都道府県選挙管理委員会の検印を受ける又は、選挙管理委員会が発行する証紙を貼付しなければなりません(公職選挙法第144条第2項)。
すなわち、衆議院議員選挙で政党等が使用する選挙ポスター、参議院議員選挙(比例代表)で名簿登載者が使用する選挙ポスター、都道府県議会議員選挙、市町村長選挙、市町村議会議員選挙において公営のポスター掲示場が設置されない場合に候補者が使用する選挙ポスターがその対象となります。
さらに詳細を言えば、衆議院議員選挙(小選挙区)にて候補者届出政党が使用する選挙ポスターには都道府県選挙管理委員会の検印を受ける又は選挙管理委員会が発行する証紙の貼付が義務付けられます。
また、衆議院議員選挙(比例代表)において衆議院名簿届出政党等が使用するポスターおよび参議院議員選挙(比例代表)で名簿登載者が使用する選挙ポスターについては、中央選挙管理会が行う検印を受けるか、それが発行する証紙を貼付する必要があります。
掲示責任者及び印刷者の氏名の記載
選挙事務所で使用するポスター、選挙自動車等に取り付けて使用するポスター、演説会場にて使用するポスター、個人演説会告知用ポスター以外の選挙ポスターには、その表面に掲示責任者および印刷者の氏名と住所を記載しなければなりません。(公職選挙法第144条第5項)
また、候補者届出政党が使用するものにあっては、その政党の名称と中央選挙管理会に届け出たものであることを、衆議院名簿届出政党等が使用するものにあってはその政党等の名称及び中央選挙管理会に届け出たものであることを、参議院名簿搭載者が使用するものにあってはその登録者が係る参議院名簿届出政党等の名称を合わせて記載する必要があります。
掲示場所
選挙事務所で使用する選挙ポスター、選挙カー等に取り付けて使用するポスター、演説会場にて使用するポスター以外の選挙運動用のポスター及び個人演説会告知用の選挙ポスターは、選挙管理委員会が設置する掲示場に掲示するのが原則です。
ただし、選挙の種類等の事情により例外としてその他場所に掲示できる場合がありますが、詳細はリンク先ページを参照下さい。
まとめ
選挙運動のために使用することができる選挙ポスターは全部で5種類あり、サイズや枚数など詳細な規制が設けられています。
これらのポスターを使用するにあたり、それぞれに適用されるルールを確実に理解し、公職選挙法に違反することがないように適切に運用しなければなりません。
終わりに
今回は、サイズや枚数制限など、選挙ポスターの使用に設けられる規制について解説しました。
公職選挙法の規制は非常に細かく、選挙ポスターもその例外ではありませんが、ルールを正しく理解し、適切に取り扱う必要があります。
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