街頭演説と演説会は言論による選挙運動の代表と言える重要なものですが、使用できる文書図画や動員人数などの規制がそれぞれ異なることをご存知でしょうか。
今回は、両者の違いを解説します。
演説会
選挙運動における演説会とは、特定の候補者等が選挙運動のための演説を行うことを予め告知し、それを聞くことを目的に集まる聴衆に向けて行う演説のことを言います。
演説会は体育館や学校、市民センター等の施設で開催されることが多いですが、公園や商業施設の駐車場などで開催されることもありますので、必ずしも屋内で行われるとは限りません。
選挙運動のための演説会は、①個人演説会、②政党演説会、③政党等演説会に分類されます。
個人演説会
候補者個人(参議院名簿登載者を含む)が開催する演説会です。
政党演説会
政党演説会は候補者届出政党等が開催する演説会のことを言いますが、候補者届出政党等とは衆議院議員小選挙区選出議員選挙において候補者を届け出た政党等のことを言います。
政党等演説会
政党等演説会は、衆議院名簿届出政党等(衆議院比例代表選出議員選挙において衆議院名簿を提出した政党等)が行う演説会です。
街頭演説
街頭演説は、街頭や公園などで不特定多数の人に対して行う演説のことを言います。
屋内から屋外に向かって行う場合もありますが、予めアナウンスしておいた人たちではなく、その時にその場所にいる不特定多数の人々に対して演説をする点が演説会との最大の違いと言ってよいでしょう。
規制の違い
選挙運動には様々な規制が設けられていますが、演説会と街頭演説ではその内容が異なります。
演説会 | 街頭演説 | |
行うことができる場所 | 公営の施設、公営以外の施設 | 街頭、公園など |
必要なもの | 立札及び看板の類(例外あり) | 街頭演説用の標旗(例外あり) |
時間帯の規制 | なし | 8時~20時 |
使用できる文書図画 | ポスター、立札、提灯、看板の類、選挙運動用のチラシ | 選挙運動用のチラシ |
動員人数 | なし | 候補者1人につき15人以下 |
場所・時間
演説会は、体育館や公民館等の公営の施設、公営の施設以外の施設のいずれでも開催することができますが、公営の施設を利用する場合はその2日前までに市町村の選挙管理委員会に申し出る必要があります(公職選挙法第163条)。
公営の施設の使用時間は1回につき5時間以内です(公営以外の施設の利用に時間制限はなし)。
街頭演説はその名の通り街頭で行うものであり、原則として任意の場所で行うことができますが、公営住宅を除く公営の施設でこれを行うことは禁止されています(公職選挙法第166条第1号)。
また、長時間に渡り同一の場所にとどまることがないように努めなければなりません。
バスや電車、駅のホーム、病院、診療所及びその他療養施設においては、演説会と街頭演説のいずれも行うことができないとされています(公職選挙法第166条第2号及び第3号)。
掲示義務
衆議院議員選挙(小選挙区)、参議院議員選挙(選挙区)、都道府県知事選挙の選挙運動における演説会では、その開催中に会場の前の公衆の見やすい場所に立札及び看板の類を掲示しなければなりません(公職選挙法第164条の2第1項)。
候補者個人が街頭演説を行うには、街頭演説用の標旗を掲げる必要があります(公職選挙法第164条の5第2項/候補者届出政党または衆議院名簿届出政党が選挙カー及び選挙運動用の船舶の上で行う場合を除く)。
時間帯の規制
演説会の開催について、公職選挙法にその時間を規制する条文は見当たりませんが、屋外の会場で開催するものについては社会通念により20時以降の開催を控えるのが原則とされているようです。
これに対し屋内で開催する場合は夜間の静謐を乱す恐れがないため、街頭演説や選挙カーを使用しての選挙運動が終了する20時以降に開催されることが多いです。
一方、街頭演説を行うことができる時間帯は公職選挙法により8時から20時までと規定されており、その他の時間帯に街頭演説を行うことはできません(公職選挙法第164条の6第1項)。
使用できる文書図画
演説会では、その会場においてポスターや立て札、ちょうちん、看板の類を掲示することができる他、選挙運動用のチラシ(選挙ビラ)を配布できるなど、数種類の文書図画の使用が認められています。
対照的に、街頭演説ではたすき、胸章、腕章以外の一切の文書図画の掲示ができません(チラシの配布は可能)。
特に、のぼり旗(看板の類に該当)は街頭演説において不当に使用されることが多く、その扱いには注意が必要ですが、演説会場での使用は合法、街頭演説での使用は違法であることを覚えておきましょう(選挙カーに取り付けて使う場合は街頭演説でも使用可能)。
動員人数
演説会においては、選挙運動に従事する人員の人数についての規制はありません。
街頭演説では、選挙運動に従事する者の人数が候補者1人につき15人を超えることができませんが、選挙管理委員会が交付する腕章を付ける必要があります。
終わりに
今回は、選挙運動における演説会と街頭演説の違いを解説しました。
特に屋外で行われるものについては両者の区別が難しい場合もありますが、演説会と街頭演説では使用できる文書図画をはじめとする規制が異なりますので、注意が必要です。
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