選挙運動に用いられる定番のアイテムの1つにのぼり旗がありますが、その使用には細かな規制があることをご存知でしょうか。
今回は、その詳細を解説します。
のぼりを使える場面
(文書図画の掲示)
選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号のいずれかに該当するもの(衆議院比例代表選出の議員にあつては、第1号、第2号、第4号、第4号の2及び第5号に該当するものであつて衆議院名簿届出政党が使用するもの)の他は、掲示することができない。
1 選挙事務所を表示するために、その場所において使用するポスター、立札、看板の類
2 第141条の規定により選挙運動のために使用される自動車又は船舶に取り付けて使用するポスター、立札、ちょうちん及び看板の類
(中略)
4 演説会場においてその演説会の開催中使用するポスター、立札、ちょうちん及び看板の類
(後略)
公職選挙法第143条第1項より
のぼり旗は、選挙運動のために使用する文書図画の中の看板の類に該当します。
公職選挙法が使用を許可している選挙運動用の看板の類は、①選挙事務所を表示するために選挙事務所で使用するもの、②選挙運動用の自動車および船舶に取り付けて使用するもの、③演説会の開催中にその会場で使用するものの3つであり、これ以外を使用することはできません。
従って、選挙運動に使用できるのぼり旗は以下の3つに限定されます。
選挙運動で使用できるのぼり旗
- 選挙事務所を表示するため選挙事務所で使用するもの
- 選挙カーおよび選挙運動用の船舶に取り付けて使用するもの
- 演説会の開催中にその会場で使用するもの
選挙事務所で使用する
選挙事務所を表示するため、選挙事務所にのぼり旗を掲示することが可能です(公職選挙法第143条第1項第1号)。
選挙カーで使用する
のぼり旗を選挙カーおよび選挙運動用の船舶に取り付けて使用することができます(公職選挙法第143条第1項第2号)。
演説会場で使用する
演説会場において、その演説会の開催中にのぼり旗を使用することができます(公職選挙法第143条第1項第4号)。
ここでいう演説会とは施設内で行われるもののことであり、街頭演説はこれに含まれません。
街頭演説では使用できない
前述の通り、選挙運動のためののぼりは、①選挙事務所に掲示する、②選挙カーおよび選挙運動用の船舶に取り付ける、③演説会場で使用するの3つの用途に限り使用することができます。
従って、街頭演説をはじめ、選挙運動におけるその他一切ののぼり旗の使用は許されません。
残念ながら取り締まりも追い付いていないようで、のぼりを使用しての街頭演説が当たり前のように行われているのが現実なのですが…。
なお、選挙運動のために行う街頭演説で使用できる文書図画は、たすきと胸章、腕章のみです。
Check
街頭演説でのぼり旗を使用することはできない
サイズの規制
選挙運動においてのぼり旗を使用できる用途が限られているばかりでなく、そのサイズにも規制があります。
選挙事務所を表示するために選挙事務所で使用するものは縦350cm×横100cmを超えてはならず、選挙カーおよび選挙運動用の船舶に取り付けるものについては縦273cm×横73cmを超えてはなりません(公職選挙法第243条第9項)。
なお、演説会の開催中に演説会場で使用するのぼり旗には上記の規制が適用されませんので、公職選挙法の解釈上は任意のサイズののぼり旗を使用できることになります。
選挙運動で使用できるのぼり旗のサイズ選挙事務所で使用するもの | 縦350cm×横100cm以下 |
選挙カー・船舶に取り付けて使用するもの | 縦273cm×横73cm以下 |
演説会で使用するもの | 規制なし |
特例の存在
(個人演説会等の会場の掲示の特例)
第2項に規定する立札及び看板の類は、個人演説会、政党演説会又は政党等演説会の会場外のいずれの場所(候補者届出政党の使用するものにあつてはその届け出た候補者に係る当該選挙区の区域内に、衆議院名簿届出政党の使用するものにあつてはその届け出た衆議院名簿に係る選挙区の区域内に限る。)においても選挙運動のために使用することができる。ただし、当該立札及び看板の類の掲示箇所については、第145条第1項及び第2項の規定を準用する。
公職選挙法第164条の2第5項より
選挙運動で使用できるのぼり旗が、①選挙事務所で使用するもの、②選挙カーおよび選挙運動用の船舶に取り付けるもの、③演説会場で使用するものに限られることを確認しましたが、公職選挙法にはこれを覆す可能性がある条文が存在します。
と言うのも、衆議院議員選挙と参議院議員選挙(選挙区)、都道府県知事選挙においては、候補者や政党が開催する演説会の開催中に立札又は看板の類を会場前の公衆の見やすい場所に掲示しなければならないと言う規定があり(公職選挙法第164条の2第1項)、同法第164条の2第5項がその立札及び看板の類を演説会の会場外のいずれの場所においても選挙運動のために使用できるとしているのです。
つまり、演説会の開催中であればのぼり旗を選挙区内のいずれの場所に掲示しても構わないと言うことになりますが、なぜ演説会場からかなり離れた場所にでも立札及び看板の類を掲示可能と解釈できる条文が制定されているのか、その理由は全くわかりません。
衆議院議員選挙(小選挙区)、参議院議員選挙(選挙区)、都道府県知事選挙に限定されることに加え、1日を通して演説会が行われることはまず考えられませんので、街頭演説や自転車での選挙運動に不当にのぼり旗を使用している候補者がこれを言い訳にすることはできないと思いますが…。
まとめ
選挙運動のためののぼり旗は、①選挙事務所で使用する、②選挙カー及び選挙運動用の船舶に取り付ける、③演説会場で使用するの3つの用途にのみ使用することができます。
よく見かける街頭演説や自転車での選挙運動にのぼり旗を使用する行為が公職選挙法違反に該当する可能性があることを理解しましょう。
終わりに
今回は、選挙運動におけるのぼり旗の使用について投稿しました。
のぼりを使用できる用途が限られる一方、街頭演説等に不当にこれが使用されるケースが少なくないと認識していますが、公職選挙法の規定は非常に細かく、当方の理解が誤っている可能性も完全に否定できません。
反論やご指摘があれば有り難く参考にさせていただきますので、ぜひご連絡いただきますようにお願いいたします。
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