不在者投票制度とは!? そのやり方や期日前投票との違いを解説!

不在者投票

最近では期日前投票制度を利用して選挙期日の前に投票を済ませる人が増えていますが、その他に不在者投票制度という制度があることをご存知でしょうか。

今回は、そのやり方や期日前投票との違いを解説します。

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不在者投票

不在者投票制度は、選挙期日(投票日)に投票することができない人が、選挙の公示日の翌日から選挙期日の前日までの期間に、不在者投票管理者が管理する場所または現在地で投票することができる制度です。

具体的には、仕事や旅行、転出などにより選挙人名簿に登録されている市町村以外の場所に滞在または居住する人が現地で投票を行うこと、病院等に入院している人がその施設内で投票を行うことなどが可能です(“投票のやり方”で詳細を後述)。

投票日を待たずに投票することができる点では期日前投票と同じですが、期日前投票が選挙人名簿に登録される市町村に設けられる期日前投票所で投票を行うのに対し、不在者投票ではそれ以外の場所で投票が可能な点が最大の特徴と言ってよいでしょう。

Point

  • 期日前投票:選挙人名簿の登録地の期日前投票所で投票する
  • 不在者投票:選挙人名簿の登録地以外で投票することができる

対象となる理由

(不在者投票)

前条第1項の選挙人の投票については、同項の規定によるほか、政令で定めるところにより、第42条第1項ただし書、第44条、第45条、第46条第1項から第3項まで、第48条及び第50条の規定にかかわらず、不在者投票管理者の管理する投票を記載する場所において、投票用紙に投票の記載をし、これを封筒に入れて不在者投票管理者に提出する方法により行わせることができる。

公職選挙法第49条第1項より

仕事や旅行で選挙人名簿に登録される市長村以外の場所に滞在している、疾病や刑事施設等に収容されている、住居移転により選挙人名簿に登録される市町村以外の場所に居住している等の理由で選挙期日に投票を行うことができないと見込まれる人は、不在者投票を行うことができます。

不在者投票を行う事由は期日前投票を行うための事由と同じです(公職選挙法第48条の2第1項及び公職選挙法第49条第1項)。

不在者投票を行う理由

  • 職務または業務への従事
  • 選挙人名簿に登録される市町村以外への滞在
  • 疾病、刑事施設等への収容
  • 交通至難の場所への滞在または居住
  • 住所移転
  • 天災や悪天候

投票のやり方

下に列挙するように、不在者投票は投票の方法により幾つかの種類に分類されますが、以下でそれぞれにおける投票の手順を解説します。

不在者投票の種類

  • 選挙人名簿に登録される市町村での投票
  • 選挙人名簿に登録される市町村以外での投票
  • 病院や施設での投票
  • 船員が指定港または船舶内で投票
  • 郵便による投票
  • その他

選挙人名簿の登録地で投票

選挙人名簿の登録地で不在者投票を行うには、その市町村に不在者投票宣誓書兼請求書を提出し、郵送される必要書類等(投票用紙、投票用封筒、不在者投票証明書)を当該市町村の選挙管理委員会に持参して投票をします。

届いた必要書類等は投票時まで開封しません。

ただし、通常の投票入場券を持ち込めば投票を行うことができる期日前投票と比べて手続きが面倒なこともあり、期日前投票制度の導入後はほとんどの有権者がこれを利用しなくなった経緯があります(現在でもこの手法で投票を行うことは可能)。

例外として、選挙期日に18歳になる有権者が選挙期日の前に投票を行う場合には選挙人名簿登録地での不在者投票を行うことになりますが、17歳のうちに期日前投票を行うことができないことがその理由です。

選挙人名簿の登録地以外で投票

出張や旅行の滞在先で投票する場合

出張や旅行先で不在者投票をするには、例によって選挙人名簿に登録されている市町村の選挙管理委員会に不在者投票宣誓書兼請求書を提出します。

その後、郵送で送られる必要書類等を受け取り、それを滞在先の市町村の選挙管理委員会に持参して投票を行いますが、不明な点がある場合は各自治体の選挙管理委員会に問い合わせましょう。

住所変更により転居先で投票する場合

国政選挙においては、転入届の提出から3ヶ月が経過しないうちは選挙人名簿に登録されないため、引越しをしてから3ヶ月以内は転居先の市町村で投票をすることができません。

よって前住所地で投票を行うのが原則ですが、前住所地の選挙管理委員会に不在者投票宣誓書兼請求書を提出して必要書類等を郵送してもらい、新住所地の市町村の選挙管理委員会に持参して投票をすることが可能です。

病院や施設での投票

都道府県が不在者投票のために指定する病院や老人ホーム(指定病院等)では、病院長等を通じて投票に必要な書類等を請求し、病院長等の管理する場所で不在者投票をすることができます。

また、未決勾留中の被疑者または被告人等は、同じく刑事施設等の長を通じて必要書類を請求し、不在者投票を行うことができます。

指定港又は船舶内での投票

船員が指定港で不在者投票を行う、または船舶に乗船中の船員が当該船舶内で不在者投票を行うことができます。

指定港における不在者投票では、船員手帳と選挙人名簿登録証明書を提出して指定港の選挙管理委員会から投票用紙の交付を受けて投票。

船舶内では船長を不在者投票管理者として不在者投票を行うことができます。

郵便による投票

選挙期日に投票所へ到達することができない身体障害者や要介護者、戦傷病者は、郵便で不在者投票を行うことができます(対象者は下の表を参照)。

まずは選挙人名簿に登録される市町村選挙管理委員会に郵便等投票証明書の交付を申請し、郵送される郵便等投票証明書を持って投票用紙などの必要書類を請求。

その後、現在場所に郵送される投票用紙に候補者名を記載して投票用封筒に入れ、表面に署名をして選挙人名簿に登録される市町村の選挙管理委員会宛に送付することで投票を完了します。

郵便投票の対象となる人
障害者
  • 身体障害者手帳1,2級(両下肢、体幹、移動障害)
  • 身体障害者手帳1級,3級(心臓、腎臓、呼吸器、膀胱、直腸、小腸の機能障害)
  • 身体障害者手帳1~3級(免疫機能障害、肝機能障害)
戦傷病者
  • 恩給法の特別項症から第2項症(両下肢、体幹の機能障害)
  • 恩給法の特別項症から第3項症(心臓、腎臓、呼吸器、膀胱、直腸、小腸、肝機能障害)
介護保険被保険者
  • 要介護5

期日前投票との違い

最後に不在者投票と期日前投票の違いに注目してみたいのですが、両者の間には①投票を行う場所と②投票に必要なもの、③投票の方法の違いがあります。

投票を行う場所については、期日前投票が選挙人名簿に登録されている市町村に設置される期日前投票所で行われるのに対し、不在者投票はそれ以外の市町村の選挙管理委員会や指定病院等、船舶内でも投票が可能で、より融通が効くと言えるでしょう。

一方で不在者投票はその手続きが非常に面倒で、まずは選挙管理委員会に申請するもしくは不在者投票管理者を通じて投票用紙などを請求し、それらの必要書類が交付されて初めて投票することができます。

これに対し、期日前投票は選挙前に自動的に郵送される投票所入場券を持って期日前投票所に足を運ぶだけで投票を行うことができますので、特に面倒なことはありません。

また、期日前投票では選挙人自らが投票用紙を投票箱に入れますが、不在者投票では封筒に入れた投票用紙を不在者投票管理者に提出します。

不在者投票と期日前投票の比較
不在者投票期日前投票
投票場所
  • 選挙人名簿の登録地の選挙管理委員会
  • 選挙人名簿の登録地以外の選挙管理委員会
  • 指定病院等
  • 指定港・船舶内
  • 選挙人名簿の登録地に設けられる期日前投票所
必要なもの
  • 投票用紙
  • 投票用封筒
  • 不在者投票証明書
  • 投票所入場券
投票の方法
  • 不在者投票管理者に渡す
  • 選挙管理委員会に提出する
  • 投票箱に入れる

終わりに

今回は、不在者投票制度について、そのやり方や期日前投票との違いを解説しました。

出張や旅行等で選挙期日に投票を行うことができない方は期日前投票で事前に投票を済ませるか、滞在先でも投票できる不在者投票制度を利用して大切な1票を投じましょう。

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