公職選挙法には、選挙運動用のビラについて、“頒布”と“散布”と言う2つの表現が存在します。
両者には意味の違いが存在しますが、“選挙ビラの頒布”と“選挙ビラの散布”が具体的にどのような行為を指すのか、選挙管理委員会に問い合わせてみました。
頒布はできるが散布は禁止
(文書図画の頒布)
衆議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙においては、選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号に規定する通常葉書及びビラのほかは、頒布することができない。この場合において、ビラについては、散布することができない。(後略)
公職選挙法第142条第1項
選挙運動には文書図画の取り扱いを規定する多くの条文が存在しますが、選挙運動用のビラ(選挙ビラ)の取り扱いを正しく理解するには、“頒布”と“散布”の違いを明確にしなければなりません。
と言うのも、公職選挙法第142条第1項にて、衆議院議員(比例代表)の選挙以外の選挙でのビラの扱いについて、規定の選挙ビラを頒布することはできるが散布することはできないとされているのです。
国語辞書では
国語辞書には、頒布と散布の意味がそれぞれ以下のように定義されています(goo国語辞書より)。
これを選挙ビラに当てはめると、選挙ビラの頒布が“ビラを広く配ること”、選挙ビラの散布が“ビラを撒き散らすこと”となりますが、ビラを配る行為が“ビラ撒き”と表現されることもあり、ビラの散布が違法と言われても今ひとつしっくりきません。
そこで、具体的に選挙ビラをどのように扱えば頒布に該当し、どのように扱えば散布に該当するのかを選挙管理委員会に質問してみました。
頒布と散布の意味(goo国語辞書)
- 頒布:品物や資料などを、広く配ること。
- 散布:まき散らすこと。
公職選挙法における意味の違い
選挙管理委員会に問い合わせたところ、通行人や聴衆、演説会への参加者などにビラを手渡すのが頒布、その名の通り選挙ビラをばら撒くのが散布に該当するとの回答を得ました。
より具体的に言えば、1つの目安として、街頭演説の場所や演説会の会場に選挙ビラがばら撒かれた状態になり、何かしらの支障が出るような状況が発生すれば散布に当たるそうです。
従って、直接相手に選挙ビラを手渡すのであればそれは頒布であって何ら問題なく、中に舞うようにビラを撒き散らさない限り公職選挙法に違反することはないと考えてよいでしょう。
なお、選挙事務所や演説会場に選挙ビラを置いておき、訪れた人に自由に持ち帰ってもらう場合も頒布に該当します。
選挙ビラの頒布方法は4種類
選挙ビラは、①新聞折込、②選挙事務所内、③演説会場、④街頭演説の場所でのみ頒布することができます(公職選挙法第142条第6項)。
②~④にあっては、前述の通り頒布の範囲を超えることなく、選挙ビラをばら撒くなどして散布と見なされることがないようにしなければなりません。
なお、選挙ビラのサイズや枚数制限、頒布方法などの詳細をリンク先のページで解説しています。
まとめ
選挙運動において、選挙ビラを頒布することは可能ですが、散布することはできません。
ただし、街頭演説や演説会への参加者に直接ビラを手渡す行為は頒布に当たり、ビラを宙に向かってばら撒くようなことがない限り散布と判断されることはないと考えられますので、そこまで神経質になる必要はないでしょう。
終わりに
今回は、選挙ビラの取り扱いについて、その頒布と散布の違いを解説しました。
相手に対し確実にビラを手渡しさえすれば散布とみなされることはないと考えられますが、サイズや枚数など選挙ビラの取り扱いに係るその他規制にも十分に注意してください。
コメント