皆さんは、住宅の壁などに選挙運動用のポスターや政治活動用のポスターを無断で貼られた経験をお持ちではないでしょうか。
今回は、これらのポスターを勝手に貼られた場合の対処法をご紹介します。
勝手に貼られたら剥がしてよい
(ポスターの掲示箇所等)
前項の承諾を得ないで他人の工作物に掲示された第143条第1項第5号のポスターは、居住者等において撤去することができる。第1項の選挙以外の選挙において、居住者等の承諾を得ないで当該居住者等の工作物に掲示されたポスターについても、また同様とする。
公職選挙法第145条第3項より
他人の工作物に選挙ポスターを掲示しようとする者は、事前にその居住者または管理者、所有者の承諾を得なければなりません(公職選挙法第145条第2項)。
同じく、何の相談もなく勝手に家の壁等に選挙ポスターを貼られた場合、居住者等はそのポスターを撤去することができます(公職選挙法第145条第3項)。
選挙運動期間外に政治活動のため使用されるポスター(“政治ポスター”)については、公職選挙法に明確な規定がないものの、私有地に勝手にこれを掲示する行為は常識を考えても許されることではありません。
選挙管理委員会に問い合わせたところ、やはりその私有地や工作物の管理者および所有者が撤去して構わないとの回答を得ました。
Memo
- 他人の工作物に選挙ポスターや政治ポスターを掲示するには居住者等の承諾が必要
- 居住者等の許可なく勝手に掲示された選挙ポスターや政治ポスターは居住者等が撤去してよい
掲示責任者への連絡
勝手に貼られた選挙ポスターや政治ポスターを被害者自ら撤去することに違法性はありませんが、念のためポスターを貼り付けた人間に連絡を入れて撤去させる方が確実かもしれません。
というのも、同居する家族がいる場合はそのうちの誰かが掲示を許可しているケースもあり、そこでポスターを剥がしてしまうと少々厄介なことになる可能性を否定できないのです。
選挙運動用のポスターと政治活動用のポスターにはその掲示責任者の名前が記載されているはずなので、まずはそちらへ連絡してみましょう。
捨てるのはNG
家の壁などの所有物に選挙ポスター及び政治ポスターを勝手に貼られた場合、被害者が当該ポスターを撤去することに違法性はありませんが、撤去したポスターを破る、あるいは破棄するなどした場合は器物損壊罪に問われる恐れがあります。
ポスターの所有権の問題もありますから、仮に勝手にポスターを貼られても撤去以上のことは決して行わず、直ぐに掲示した人間に連絡して回収に来てもらいましょう。
前述の通り、市町村選挙管理委員会が設置する掲示場以外の場所に掲示される選挙ポスター、政治活動用のポスターのいずれにも掲示責任者の名前が記載されていますが、連絡先がわからない場合は地域を管轄する選挙管理委員会もしくは警察に連絡することも有効です。
その他違反の可能性も
家の壁など他人の工作物に居住者等の許可を得ることなく選挙ポスター及び政治ポスターを掲示することは公職選挙法第145条第2項に違反しますが、その他の規定に抵触する可能性もあります。
選挙運動用のポスターについては、市町村の選挙管理委員会が設置する掲示場以外の場所にこれを掲示することができるのは、国政選挙では比例代表の候補者が使用するものと政党が使用するものに限られ、衆議院小選挙区及び参議院選挙区の候補者個人が使用するポスターを公営の掲示板以外の場所に掲示することはできません。
同じく知事選挙の候補者が使用するポスターも市町村選挙管理委員会が設置する掲示場以外の場所への掲示が禁止されています。
県議会議員選挙、市町村長選挙、市町村議会議員選挙では市町村選挙管理委員会がポスター掲示場の設置を条例にて定めている場合にはそれ以外の場所に選挙ポスターを掲示することができませんが、工作物の所有者の承諾以前の問題としてポスターの掲示そのものに違法性があるケースがあることを覚えておきましょう。
終わりに
今回は、自宅の壁等に勝手に選挙・政治ポスターを貼られた場合の対処法を解説しました。
万が一無断でポスターを貼られた場合は居住者が自ら撤去するか、掲示責任者へ連絡して撤去させましょう。
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