“ヤフオク”をはじめとするネットオークションを利用することで様々な商品を通常よりも安く入手できることが多く、パソコンもその例外ではないものの、正しい知識を身に付けていないと痛い目に遭う可能性もあります。
その代表とも言えるのが製品保証ですが、例え新品未開封品であっても、保証書が付属していても落札者が製品の保証を受けられない場合があることをご存知でしょうか。
譲渡と保証
皆さんご存知の通り、テレビやオーディオ等の家電製品には通常1年間のメーカー保証が付帯しますが、個人間での取引やヤフオク等のネットオークションを通じて製品の譲渡が行われた場合、原則として保証を受ける権利も引き継がれます。
(言うまでもなく、保証書を紛失した場合や保証が終了しているとなれば話は別ですが…)
ところが、パソコンの譲渡については少々事情が異なり、保証期間が残っており保証書も引き継がれているにも関わらずメーカー保証を受けることができないケースがあると言うではありませんか。
実は、私自身がオークション(ヤフオク)でパソコンを購入したもののメーカー保証を拒否された経験を持つのですが、その体験も踏まえて、本投稿では製品の譲渡と保証に対する各社の対応をご紹介しようと思います。
各メーカーの対応
今回採り上げるのは、①Apple(アップル)、②DELL (デル)、③HP(ヒューレット・パッカード)の3社。
いずれも海外メーカーでありながら日本にも利用者が多く、私自身も数台のマシンを所有しているのですが、製品の譲渡と保証について問い合わせてみました。
・オークションで入手したパソコンへの保証の適用状況
保証の引き継ぎ | 保証書 | 備考 | |
Apple | ◯ | 必要なし | 改造品、偽造品でないこと。保証期間内であること。 |
DELL | ◯ | 必要なし | 所有権の移行手続き並びに当時点で登録されている所有者の情報が必要。 |
HP | × | – | いかなる場合も保証は適用されない。 |
Apple(アップル)
※ 画像は“Appleさん販売ページ”より引用
まずはAppleですが、1年間のメーカー保証期間内であれば製品の譲渡が行われた場合も新たな所有者が保証を受けることができ、面倒な手続きも必要ありません。
当社のパソコン“Mac”には個体ごとにシリアル番号が割り振られており、残りの保証期間等の情報は全てAppleにより管理されていますが、オークション取引を経て所有者が変わった場合にも新所有者が当該個体を所有している旨を伝えるだけで所有者情報が変更され、保証を受ける権利も移行されるのです。
Apple製品は保証書を必要とせず、シリアル番号を伝えるだけで所有者の変更手続きを行うことができますし、最新の所有者が製品を入手した過程なども一切問題になりません。
さらに、1年間のメーカー保証期間内であればApple Careを購入し保証を延長することもできるので、オークションを通じて購入する側にとって非常に有難いシステムと言えるでしょう。
もちろん、偽造や不当な改造が行われている、保証期間が終了している、(当該製品の最初の購入がApple公式ストア以外の場合)製品が最初に購入された日を証明するレシートがないなどの理由で保証の引き継ぎができないケースもありますが、不法改造はともかくとして、残りの保証期間やレシートの有無については出品者に質問することができますし、その回答が怪しい場合には入札をしなければよいだけの話ですからね。
DELL(デル)
※ 画像は“DELLさん販売ページ”より引用
続いてはDELL(デル)ですが、こちらもAppleと同様に製品の譲渡に伴い保証を受ける権利も移行されますが、一定の条件を満たす必要があり、Appleに比べて若干ハードルが高くなることを否定できません。
と言うのも、保証を受ける権利を引き継ぐには所有権の移行手続きが必要で、その際DELLに対して前所有者の情報(その時点でDELLの管理情報に所有者として登録されている名義)を伝えなければならないのです。
DELLから製品を直接購入した場合、製品出荷の時点で自動的に購入者が所有者として登録されるのですが、当該製品がオークションの取引相手(出品者、売り手)により注文されたものであれば取引相手の氏名が登録名義であり、その情報を持って所有権の譲渡手続きを行えるものの、商品が出品者のもとに達するまでに第3者を介しているケースでは登録されている名義が出品者の氏名と一致しない可能性があり、その場合は所有権の移行ができないことに…
製品が仲介者の間を転々とする毎に所有権の移行手続きがしっかり行われていればよいのですが、オークションには初めから転売が目的の方も多く参加していますし、何よりもほとんどの人がこの事実を知らないでしょうから、その蓋然性はかなり低いと言わざるを得ないのです。
規則によりDELLが第3者に個人情報を開示することは絶対にありませんので、落札者が自らその時点で登録されている所有者の情報を入手するより他なく、それができない限りはどんなに頼み込んでも無駄なので、オークションでDELL製のパソコンを購入する場合は製品の所有権が誰の名義で登録されているのか、出品者への確認が必須と言えるでしょう。
以上の様な事情を知らず、“新品”、“未開封”、“保証書あり”、“保証を受けられます”等の文言を鵜呑みにして安易に落札する行為には大きなリスクが伴いますので、十分にご注意下さい。
HP(ヒューレット・パッカード)
※ 画像は“HPさんホームページ”より引用
最後はパソコン世界シェアNo1を誇るHP(ヒューレット・パッカード)ですが、初めに結論を言えば、商品の状態、有効保証期間、保証書の有無等の条件に関わらず、オークションで購入したパソコンに対しては一切保証が適用されません。
驚かれるかもしれませんが、当社保証規定にて、保証を受けることができるのは最初に製品を購入した者のみであり、オークションはもちろんのこと転売を経て製品を入手した者(HPは第3者と表現)が保証を受けられない旨が明記されているのです。
〔前略〕この保証は最初の購入者であるお客様ご本人にのみ適用され、お客様が製品を転売された第3者には適用されません。〔後略〕
私自身もにわかには信じ難く、HPに問い合わせたところ、「その通りです。弊社から直接若しくは弊社が正式に商品を卸している家電量販店以外から入手された製品については、未開封でも、保証書があっても一切保証が適用されません」とキッパリ断られてしまいました。
HP製のパソコンと言えば人気も高く、代表的なオークションサイトであるヤフオクには現在も“保証書あり”、“メーカー保証期間残り〇〇年間”などと称して多くの製品が出品されていますが、これらの文言には何ら根拠がないと言うことですね…。
また、1年間のメーカー保証の他、HPにはより待遇の良い有償保証プランが用意されているものの、こちらもやはり正規の方法以外で入手した製品への適用は不可能とのことでした。
まさに為す術なしと言ったところですが、“保証など不要”とお考えの方を除き、オークションでのHP製のパソコンの購入は避けるのが賢明だと思います。
まとめ
今回の調査の結果、オークションで入手したパソコンに対する保証の適用状況がメーカーごとに異なることが明らかになりましたが、引き続き保証を受けることを前提とするならばこれらの事情を把握した上で的確な対応を取る必要があると言えます。
具体的には、Macを落札する場合には保証期間の残りと不法改造の有無を気にするくらいでよく、DELL製品についてはさらにその時点での登録名義の確認が必須、HP製品の購入は残念ながら見送るより他ないと言ったところでしょうか。
もちろん、“メーカー保証は必要ない”、“壊れたら有償で修理すればよい”とお考えの方にとっては全く不要なことではありますが、万が一の場合の修理代もバカになりませんから個人的には保証を受けることができる製品の購入をお奨めしたいですし、であるからこそ出品者が掲げる“保証書あり”、“〇〇年間保証が受けられます”の文言を鵜呑みにしないようにご注意いただきたいと思います。
終わりに
今回は、ヤフオク等のオークションでのパソコンの売買と製品保証の関係について投稿してきました。
保証の適用状況はメーカー毎に異なりますが、特にHPとDELL製のパソコンの落札を検討されている方は、今回ご紹介した内容を参考に賢く対応するようにしましょう。
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